音別では三人もの乗車があり、一気に乗客が倍増して元気を取り戻した我が釧路行ではあったものの、立ち枯れの大樹が点々とする湿原を横切り到着した古瀬で特急「スーパーおおぞら10号」交換のため一〇分間の足止めをくらった。まあ、ここまでくれば、一〇分など大したことではない。古瀬の駅は元信号場だけに、ホームも木材を組み合わせた簡素なもので、辺りも雑木林しかなかった。帯広から我が列車を転がしてきた釧路運輸車両所25仕業の運転士が、板敷のホームに立ち木々を眺めている。土方歳三を思わせる凛々しい風貌の若者だ。長かった乗務もあと四〇分ほどで終わる。晩のおかずはなんだろうか、と考えているのかもしれない。次第に夕色が漂ってきた。「庶路」「大楽毛」などユーモラスな駅名標を見せられるうちに、湿原を背に製紙工場や社宅などが建ち並ぶ景観へと変わってゆき、いつしか乗客も三〇人ほどに増えていた。北海道第四の都市釧路の圏内に入ったようである。『必殺シリーズ』のエンディングのような夕映えが西の空を染め、地平に沈む夕陽が車内になだれこんでくる。釧路西港に停泊する大聖フェリーの白い船体がオレンジ色に輝いていた。17時23分定刻、我が愛しき2429Dは、なにを誇るでもなく釧路の駅に静かに身を横たえた。
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